ORANGE overALLS drive

オレンジのつなぎを着た自転車乗りのブログ

全日本選手権個人タイムトライアル

どこから話したらいいものか。すべての道がローマに通じてるなら、この世に生を受けて24年間やってきたことすべてが今回の結果に繋がったのだろうか。
先々週食べた1.2kgパスタも、接写でバレちゃった鼻毛でさえも、今なら後悔していない(そして今回の結果とは全く関係ない)。今までのすべての出来事をポジティブに考えられる、そういう意味では世界が変わったのかもしれない。
でも実際には日常が変わることはなく、今日も元気に出社しましたとさ。

全日本チャンピオンになりました。

木曜日にフリーダムに行ってホイールを借りる。
店長が今回出れなくなってしまったため「使うか?」と聞かれ、二つ返事で「ありがとうございます!」と。
お借りしたのはイオ、コメット、EC80、EC60、タイヤはすべてVELOFLEX EXTREME。

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金曜は信大自転車部の先輩が東京に来ていたので、にっしーと三人で有楽町のタイ料理屋で飲む。
久々のタイの匂いにタイ合宿を思い出す。レース前なので飲むまいと思っていたけど、久々に会った顔を見ると飲みたくなる+シンハービールだ!参りました。

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土曜日は朝一でユキの家に行ってお好みやきを食べる。今回ユキは出れないが、駒沢の選手が出るのでサポートとしてきてくれた。
ユキはイナーメ戦士であり駒沢の監督でもある。今回駒沢から参加は先日の長野県国体予選で勝った渡辺。神奈川まで迎えに行く。僕だったら「お前らが来いよ!」と言ってしまうがユキは優しいのだ。
車でぶーーんと那須まで。せっかくなのでロードコースを試走しようと。日差しも強くて暑い!二周走って終了。
お昼は那須ブラ―ゼンの選手に脅して聞いた、お洒落カフェ「Chus」。12月にオープンしたばかりのカフェで、店内には地元野菜も売っている。店員さんがかわいい。
二階に案内されソファーで注文。ランチセットは三種類で「鶏のグリル」を三人ともチョイス。店員さんがかわいい(二回目)

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鶏のおいしさもさることながらみそ汁等もついてきてご満悦。そして店員さんがか(ry
食後のコーヒーを飲んでうとうと。雨が降り出してきたけどTT会場へ。
ユキに受付と監督会議を任せて渡辺と試走へ。長い下りを確認したかったけど信号+車が多くて一度も下れず。
激坂に入るコーナーで渡辺と交互に車が来ないか見ながら、DH持っていけるか確認。無理。怖すぎる。
前輪を全部確認して終了。
(すいません。シクロワイヤードさんが試走していないと書いていましたが、前日試走はしています。当日の試走ができなかったという意味です。そしてそれは皆同じ条件です。)
宿は「民宿斉藤」さん。中京大の子もいたな。ご飯もおいしく、お母さんがわんこそばのようにご飯のおかわりをすすめてきて、いつも以上に食べてしまった。
一人部屋でユキに全身マッサージしてもらう。いつも伊豆ちゃんがやってくれるときは、さすがにできないけど今回はユキなので全裸にて。

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サービスショット?いや、事故に近いな。
全身マッサージ+イナーメオイルでグッスリ。

当日はいろんな方が写真を撮ってくださいました。ここから写真が多いですが撮ってくださった方のお名前を合わせて、僕が載せたいので載せます。本当にいつもありがとうございます。
当日は朝ギリギリになってしまったけど7:30に会場入り。渡辺のスタートが9時だからだ。というわけで14時スタートの自分は暇。すこぶる暇。
テツさんも暇なようで「UNOするか?」と言ってやってくる。本当にあったらやっていたかもしれない。そのくらい暇だった。
渡辺の応援に登りのところまで行こうと思ったけど遠くて途中で断念。渡辺もU23で12位と一時は暫定一位にもなる健闘ぶり(第一走者・・・察してください)。
さて自分の準備はというと、暇であくびが止まらないのでユキたちに買い出しをお願いして車内でお昼寝一時間。
高岡さんの出る第一ウェーブのスタート時間に起きて皆さんを応援。知ってる人が多くなったなぁ。
自分の準備をしながら放送を聞いてラップタイムを参考にする。一回内野君がゴールでコースアウトしてて気をつけねばと肝に銘じる。
第一ウェーブの一位は高橋さん。なんと前後GOKISOのディープ。これはGOKISOパワーや。GOKISOさんはディスクを作らないのかなぁ・・・。
出走一時間を切って固定ローラーでアップ30分。特にパワー計がついているわけではないので淡々と。最後回転数マックスで回して心拍を上げて終了。
風も弱そうだったのでイオ。空気圧は9入れてもらう。15分前になって検車に行くと誰もいない。「おいおいみんな失格だな!」と憤慨。

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ふぉとばいユキ。第二ウェーブ出走は四番手。 

以前お世話になったhamster spin代表のmasahifさんが股関節を看てくれて、調子いいとのこと。でも、「出走前の選手に『良くない』とは言わないよ」と言っていて、おっとと、信憑性がなくなったな。
嘘じゃないと言ってくれました。そしてそれは事実でした。
雨が降ってきたとのことで渡辺に8気圧に変えてもらう。不安は一つでもない方がいい。
レッドブルを注入して翼を生やし、いざ。
大下りはDHをもったまま「南無三!」と突っ込む。53-11回り切り。信号で平坦になって大きく自転車が跳ねるので、そこで回すとチェーン落ちの可能性もあるから足を止める。

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photo by kensaku sakai
前を走るのはKINAN Dragon野中さん。白いジャージなので見つけやすい。とりあえずの目標。
下界に降りると大粒の雨。8にしてよかった―。
ファミマコーナーをDHもったまま曲がる。買い出しに行ったユキから往路向い、復路追い風というのは聞いていたので、意識的に往路を踏む。
頭を下げる意識で白線を左に見て漕ぐ。

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photo by kouji okamoto

折り返しにあっという間にきた。そこで気づく「イオって雨だとブレーキ効かないって店長言ってたけど、俺一回も確認してねぇな・・・」
でも普通に効きました。よかったよかった。まぁ結構握ったけどね。
折り返しのコーンを目安に脳内タイマー。野中さんとの距離は縮まっていることがわかる。
問題は後続の武末さん。加須では両輪ディープで負けたので後ろということでかなりビビっていた。蓋を開けてみると全然来ない。これで前だけに集中できる。
追い風区間はどんどんスピードが出る。自分の自然に回せる回転数(いくつだろうか?80ぐらいかな)で休ませながら走る。
ファミマのコーナーはDHもったままいけるんだろうけど、緑のフェンスがブラインドになって先が見えず、先の見えないコーナーには突っ込めない病の私はブルホーンもってブレーキしながらこなす。結局3回ともそうしてしまったな。加えて横断歩道の白線が怖かったのもある。
下りで速度をつけて信号前の登りへ。野中さんを抜く。

f:id:orangeoveralls:20150622203554j:plainphoto by Hidehito Ito

ここも踏んで次の平坦でまた休む。言い方が悪いな、激坂への準備、だな。

激坂に入りDHをもったままシッティングで登る。ギアは53-27。シッティングとはいえ、お尻は若干浮いてしまう。それでも20km/h以上だして登る。野中さんを抜く。
ここの観客が一番多くて「りゅーたろー!」と声が聞こえる。足に力が入る。
登り切りでさらに意識的に踏む。ここで失速したらタイムは伸びない。でも激坂の疲労はすぐには取れなかった。三回とも40km/hを超えるまで時間がかかった。
V字コーナーは事前情報にあったようにアウトーイン―アウトで行けばDHを持てるとのことでやってみると、うん、余裕だ。
でもその後のゴールに入るコーナー抜けぐらいにあるグレーチングそれとスタートゴールの緑のシートが滑るんじゃないかと本当に怖かった。
下りに入る前にラップをポチ。16:50の表示。高橋さんと同じぐらいか―と弱冠凹む。
次の下りでアクシデント。信号の平坦の跳ねでDHの先のシフトボタンが抜けてしまった。バーテープだけでついてる感じ。しかも右なのでめっちゃ使う。グラグラして鬱陶しい。
ファミマを抜け、往路は先ほどと同様に踏む。

f:id:orangeoveralls:20150622203802j:plainphoto by takeo ekuni

前に小畑さんが見えてモチベーションが上がる。往路で小畑さんを抜く。あと一人は愛三の綾部さん。
復路は相変わらず休む、じゃなくて準備。一周目と同様の感覚で踏んでいく。
二回目の激坂はグラツキが鬱陶しかったのでDHの真ん中を持って登る。登りきる手前で右ふくらはぎに攣りそうな感覚。あと一回もってくれと願う。
ユキに「暫定トップだぞ!」と言われ頷く。しかし激坂区間はスタートゴールと離れていたので、まぁ情報が遅いのではないかと勝手に解釈し、信じていなかった。
最後の下りも跳ねてボタンを押してしまいインナーに落ちたけど慌てずに戻す。綾部さんが前に見える。
ファミマ過ぎてから、いろんなレースでお世話になっているモトの小島さんが隣に来て「龍太郎!暫定トップ!」と叫ぶ。これは信じるやつだ。しかも自分の足とモチベーションはまだ衰えていない。いける。
それでも往路は長かった。「ここ頑張れば全日本チャンプ。ここ頑張れば全日本チャンプ。ここ頑張れば全日本ちゃんこ。ちゃんこってなんだっけ。ちゃんちゃんことの関係性は・・・?」とかくだらない方向に思考が流されていく。
他にも靴がびちゃびちゃだから臭くなるなぁとか、大島でもシフトがグラグラになったのでポールさんといった温泉を思い出したりとか、そんなん。
折り返しに来て「ここで転んだら台無しだ!」と思いゆっくり回る。そして遅すぎて後悔する。
ファミマのコーナーも無事抜けて登り→平坦。ちょっと無理すれば綾部さんに追い付ける距離と思ったけどここは最後の激坂にかける。コーナーで鉢合わせないように調整して最後の激坂へ。
綾部さんに追いつけるかと思ったけど、最後足を残していたみたいだ。追いつけない。自分もなんとかシッティングで登る。眼球が裏返って体がバラバラになりそうだ。足も攣りそうだ。
沿道の観客の声だけが血を巡らせる。
平坦に入ってペース上げなきゃいけないのに上がらない。

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photo by kensaku sakai

上がらないままコーナーへ。そしてもがく間もなくゴール。

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坂まで登って折り返すとチームメイトたちが走ってこっちにくる。「暫定一位だ!」「全日本チャンプだ!」と喜んでくれる。
それでも僕は信じられなくて、まだゴールしていないから結果は分からないと頭ではわかっていても、こんなにも喜んでくれる人がいるということが嬉しくて泣いてしまった。
テントに戻って結果を待つ。とりあえず監督に電話してもらってまだわからないけど暫定一位ということを報告。「なんか龍ならやってくれる予感があったんだよね~」と。どうしてここにいないんだとすごく思った。この時間を監督と共有したかった。
親父、そしてフリーダムに電話し報告。何しゃべったか覚えていない。

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photo by むつみさん
増田さんがゴールし、一瞬のタメのあと「届かず!」と放送が入る。心拍が上がる。
西園さんの時も「増田と同タイム!」と。この時点でほぼ確定。足が震えてくる。
最終走者の佐野さんがゴールし、サラリーマン全日本チャンピオンが誕生した。
すぐさまメディアに囲まれる。信じられなくて、質問の答えにもちゃんと答えられているかわからない。思いついたことをべらべらしゃべってたんだと思う。編集が大変だ。
すぐに表彰式。ドーピングチェックはもちろんのこと、その後に取材だとか、全日本ジャージの誓約書を書くとか、会見があるとか、いろいろ言われて「順番は?」と思わず聞いてしまう。
広美さんも見事女子で3位に入り、嬉しいツーショット。

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photo by 高岡さん 
女子の表彰中にそういえばちゃんと両親に結果を言ってないなと思い立って電話。表彰中に不適切でした。申し訳ありません。
ただ、両親は本当に喜んでくれた。母さんの声を聴いて自然と涙が出てきた。

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photo by kensaku sakai

安心したのかな。親父の「周りの人への感謝を忘れないように」という言葉が沁みた。
二位は四秒差で増田さん。キャノンデールでも走っていたブリッツェンの大エース。
三位は増田さんとほぼタイムで西園さん。我々国立大生の憧れの存在。ただでさえ東大ですごいのに、速いときたから僕たちはまともに話ができなかった。
この二人の間に立つというのが信じられない。ずっと震えていた。

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photo by kensaku sakai
西園さんは「やっちまったよ~」と笑っていた。けど「ロードはまけねぇぞ」とちょっと覇気的なものを感じた。
増田さんは笑っていなかった。地元開催ということもあるから当然だと思う。でも「おめでとう」と言ってくれました。
全日本ジャージを着て、唐辛子の王冠を被してもらう。花束もまさかの唐辛子。これは食べられるのだろうか、だとしたら一石二鳥のナイスプレイだ。
先週に引き続き絹代さんにマイクを向けられ、しどろもどろ質問に答える。答えられてたのかは別にして、途中で言葉に詰まったけど何とか泣くのはこらえた。あそこで「頑張って―」とか「泣かないで―」とか言われてたら泣いてたな(これはフリではありません)。
終了後の会見も何言っているのかわからないまま終了。とりあえず謝っておく。
ドーピング検査の終了後、ふぉとふぉと館の武居さんとともに夕食へ。ひたすら車を走らすけど飯屋がない。
やっと入れたところが当たり、というのはよくある話。
武居さんは長野で僕が自転車始めたころから写真を撮ってくださるおなじみの方。
初レースの木祖村残念レースで勝った時に撮ってくださったこの写真が僕の自転車人生のスタート。

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この時はここまで来るとは思わなかった。
「今回のTTは来てよかった」と何度も言ってくれてすごく嬉しかった。ノンアルコールで祝勝会。ご馳走様でした。

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photo by ユキ

レースに来ていた方や、U-STREAMで見ていた方、いろんな方から祝福のメッセージが来ています。通知がやむことがないです。びっくりです。
一つ一つちゃんとお返ししていますが、間に合っていません。申し訳ありません。しかしこのブログを楽しみにしている方もいらっしゃるとのことだったので優先しました。
サラリーマンライダーの星なんて言われてますが、社会に出てまだ三年目のペーペーです。
養うべき家族もいなければ、時間もあるので、プライベートは自転車にすべてつぎ込んでいます。
そういう意味ではお祝いの言葉をくださった皆さんと立場が違い、星なんて言われて非常に恐縮しています。
僕自身全日本チャンピオンになるという夢をやんわりと思い描いていましたが、こうして応援してくれている皆さんとこの感動を共有できて、喜んでもらえて、本当にうれしいです。

いつもありがとうございます。今週末も頑張ります。